山田学区社会福祉協議会

ひきこもりについて考える ~地域としてできること~    NPO KHJ全国ひきこもり家族会連合会 理事 池上正樹氏 講演概要

  ひきこもりについて考える  ~地域としてできること~  NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」理事 池上 正樹氏 
日時:2023年2月7日  場所:キラリエ6F
主催:社会福祉法人 草津市社会福祉協議会
ひきこもりについての講演会が上記のとおり実施され、その講演概要を以下のとおりにまとめました。参考になれば幸いです。   (本文と挿入カットとは関係ありません)

講 演 概 要

ひきこもりとは
 「ひきこもり」は病名ではありません。他人との関係を遮断し、自分から発信しないのが特徴です。彼らに共通のベースとしてあるのは「人が怖い」ということが大きい。 これまでの経験から嫌な目にあったり、ひどい目にあったり傷つけられたりしたことがあって、「他人を頼れない」状態のことです。
 そのため社会は危険、命を脅かされる、家の中だけが安心できる「居場所」-これを生存領域と言う。命を守るため退避している状態です。 自分は生きていても仕方がないと社会に絶望しかなくなると死を選んでしまう。ですから、要因はひきこもりと自殺とは一緒と言われています。
 でも、ひきこもりは、わずかな望みを持っており、生き延びようとしている証なのです。まじめで、心優しいかたが多いので、自分のせいで親の期待に応えられず申し訳ない、迷惑をかけていると思っています。 でもうまく言葉で表現できないもどかしさがあり、親にあたれないから、物にあたる、物を壊す代償行為となります。
 内閣府の調査では、全国で115万人のひきこもりがいると言われています。
 今、15歳から69歳までを一斉に調査しており、今後、ひきこもりは子ども家庭庁に移管されるそうで、それまでに概要が発表されるのではないかと言われています。
背景はみんなそれそれ
 背景は一人ひとり違います。約8割の人が就労経験者で、それくらい社会的ストレスがひきこもりの要因となっています。また、要因は1つではなく多様化複合化しており、1つの要因を解決しても、なかなか治らないのが現実です。
家族  深刻な人ほど、「ひきこもり」とラベリングするのを嫌います。自分はひきこもりではないと思っており、現実のすがたと矛盾しています。そこが難しいところです。 体調が悪化したり、親が亡くなった後の生きる意欲を喪失したとき、その命をどう救うのか。でも、診断名や障害認定がないと、国の救済制度に乗せられないのが現実です。 本人の心情である「病気ではない」「障害ではない」こうなったのは社会の問題で、「診断ありき」では当事者の多様なニーズに応えられない実態があります。 ひきこもりは一人ひとり違い、1人の成功事例のPRは絶望のモデルなってしまいます。病気や障害ではないことの苦しさを見てほしいと思っています。 その人を見て、心で感じてほしいと願っています。足しげく通って丁寧に丁寧に信頼関係を築いていくことが大切です。
おとなは学生時代の体験に起因
 大人のひきこもりは、インタビューによるとその起因を学校時代の体験に遡る人が多い。学校での暴力、いじめで辛いことがあって、それ自身がきっかけというよりも、その時、周りの大人たちがどの様な対応をしたかをみて、子どもたちがものすごく傷ついています。
 教育委員会の方とお話しても、組織防衛として守りに入ってしまう。無かったことにしようとする。そのような社会になってしまっています。
 その場にいる親たちや担任の先生が子どもの味方になっているかを見定めています。そして、うらぎられたと感じてしまうと、これが決定的な「ひきこもり」原因になってしまいます。
 ですから、不登校という選択は正しいのです。危険を察知して、自分を生き延びようとしています。ところが、親に心配をかけまいと一生懸命に登校する子もいます。苦登校とでもいいますか。こうなると、どんどんと命を削られていきます。
 学校を卒業して、社会に出たとき、例えば上司から怒鳴られるといったことがあると、過去のトラウマがフラッシュバックして、もう会社に行けなくなってしまうことが起きています。
 学校時代は勉強が大事です。本人が安心して勉強できる環境が必要で、クラスがだめならば、保健室でも、校長室でも、学校がだめなら、適応指導教室とかフリースクールとか、家から出られなければ通信教育とか、家庭教師とかがあります。 子どもたちの興味のあるところを伸ばしてくれる人がいると子どもは安心できます。理解がある大人、自分がいてもいい場所、緊張しなくてもいい環境が大事です。
ひきこもり家族の現状
 家族が置かれた現状ですが、偏見や誤解が多いですね。「働かざる者食うべからず」というような呪縛に苦しめられています。親が動かない(動けない)から、兄弟姉妹が動こうとしても、自治体側が兄弟姉妹ではなく「親に来てもらってください」と追い返す、 受け付けないという想像がつかないことが起きています。また、親時代の意識の中にある昭和の価値観「人に頼るな」「自分の力で打開しろ」といったことで相談ができなくなっています。 また、あの子は「ちゃんとやってくれるはず」と、相談が先送りになってしまっています。
 個人がしんどいということが最優先であって、親が愚痴を言う場がないことが相談につながらない理由にもなっているのかなと思っています。
 やっとの思いで相談したら「もっと落ち込んでください」と言われたり、「~できないからひきこもるんですよ」と責め立てられ、そのためどんどんと自分を許せなくなってしまいます。 しんどいと顔に出しては、本人に伝わる と自分を責めてばかりのときは、判断を間違ってしまいます。
大切な家族支援
お弁当  親(家族)を支援する発想がなく、「なんでここまで放置していたの」と責め立てないで「よくここまで頑張りましたね」とねぎらい、つながりを維持していくことが大切です。
 出てこれない家族には、メッセージを届けたり、「お話だけでも聞きますよ」というので良いのです。今までのひきこもり対策では、本人を引っ張り出そう、自立させよう とやってきたが、これはよくありません。 何が最優先かというと家庭の中を安心できる空間にもっていくことで「ひきこもりながら生活していていいんだよ」「生きていてくれるだけでいい」との雰囲気を作ることです。
そのために、
  l それぞれの意思を尊重し合える(互いに干渉しない)
  l それぞれのペースを大事にする(せっつかない)寄り添う関係
  l 必ず逃げ道がある(追い詰めない、追い詰められな)
  l 一日一日楽しみがある(生きる喜び、嫌なことは忘れる このため 家族会は重要
 函館市では地域包括支援センターを福祉拠点とし、8050問題を主に支援するつもりだったが、22年度開設以降、ひきこもり相談が急増した。家族支援を継続した結果、本人にも会え、支援につなげられた事例が複数出てきました。
 本人は家族の役に立ちたいと、家庭内で家事手伝いを貢献している。ある父親は、そうではない、「働くというスイッチを入れてくれ」というかたがおられたが、そうではない。 家事をやってくれているのは自分も申し訳ないと思っての行動ですので、一番いいのは、感謝の気持ちを伝えることです。家族会に参加して、気持ちが楽になった、子どもへの対応が変わった、子どもへの接し方が学なべたというのがおおかったですね。
家庭内コミュニケーションへのアドバイス
 声掛けで大切なのは、「そうだね」、「すごいね」というのは魔法の言葉で、「ありがとう」、「助かったよ」という家庭内での役割の実感の積み重ねが、地域へと繋がっていきます。 「よく頑張ってきたよね」という言葉で、今まで自分が押さえてきた、欲望・感情・感覚を取り戻すことになっていきます。
 とじこもっていても、本人が大事にしていることがありますから、それを知る努力をし、同じようにそれを大切にしていきたいものです。アニメとかゲームとか、親がわからないときは、親の方が調べて知識をえて、話を合せる努力が必要です。
 当事者が自発的に話せないときに家族ができることは、メール、ライン、メモでのやりとりもOKです。
  ・連絡事項を伝えることから始めてキャッチボールへ
  ・長文ではなく簡潔に
  ・核心に触れる話はしない
  ・メモ書きは食事の皿に添えておく
  ・頻繁ではなく-定の間隔を置く
  ・返信がなくても表情や行動からメッセージを理解する
控えめな表現で
送迎   「ケーキを冷蔵庫に入れておいたよ」
  「巣鴨の地蔵通りで塩大福を買っておいたよ」
  「コンビニでミスドと同じようなもの売り出したよ」
 また、親はできるだけ外出し、あいさつは玄関でさりげなくして、当事者が気を使わなくてよい自由な時間を設けることも必要です。
 このようにして、情報を届けることができますが、このとき折に触れ、自己選択や自己決定の機会を作るよう心がけます。
  「ハンバーガーかピザを買ってこようと思うけど、どっちがいい?」
  「昼ごほんの麺は、冷たいのにする?温かいのにする?」
 メモしてペンを添えておく「要らない」の返事なら自己主張の始まりです。
 好きななこことや本人が得意ななこことから勇気を出してお願いする。「頼みたいことがあります」などと家事などのスモールゴールを増やしていきます。そして、本人の描く世界をイメージし、言葉にならない心の深い声を聴き、絞りでた一言を受け止める。
 「そうだね」「そうだったんだね」 「気が付かなくて悪かったね」と共感的に理解を示していくと、自分も本人も落ち着いてくる。親の寄り添いで思いやりを実感できると、いつしか本音や弱音を吐露してくれるようになります。
親が元気なうちに
 親が元気なうちにできることは、信頼できる第三者とつながることです。本人が将来ひきこもりながらでも生きていけるように準備するため、市町のひきこもり担当者部署に相談しておくこと。 本人や兄弟などに負担がかからないよう情報を共有し、いざというとき本人が電話できるように連絡先や名前を示しておく。公的機関や家族会、講演会、学習会などで社会資源などの情報を収集しておくことが必要でしょう。
 ひきこもり支援というと、階段状のモデルを作っているのを見かけますが、決して階段状の一方通行ではありません。行きつ戻りつします。一度社会に出たものの、またひきこもるのは34%となっています。 社会に出ますと、親が喜びますので本人はますます頑張ろうとしますが、そのため負担が増大し大変なことになってしまいます。無理をしないで、戻ってきていいんだよ声をかけてください。
 地域のひとも、声をかけてやってほしい。「おはよう」とか「こんにちは」とか、簡単な挨拶で、自分は無視されていないんだ、一員として認められていると実感することが社会につながっていく基本になっています。 いま家族会も京都と滋賀に支部を作ろうとしています。